証拠が足りなくても選ばなければならない:選択カードで不確実さを明確にする
宇宙ステーションの入退室設備がなぜ故障したのかは、まだわからなくてもかまいません。ただし、プレイヤーが何を根拠に行動し、どこでまだ中止できるのかは明確にする必要があります。確認済みの事実、未解明の点、行動の限界をまとめた選択カードで、原因の当て推量を理由のある決断に変えましょう。扉が動かないことは命令が実行されていない証拠にはならず、受信確認から確定できるのも、その記録が裏づける事実だけです。

故障の答えより先に、行動の理由を用意する
証拠が足りない場面の選択を書くときは、まず三つの情報をプレイヤーに示します。何が観察されたのか、どの問いにまだ答えがないのか、そして各行動をどこまでなら中止したり別の行動に切り替えたりできるのかです。選択後の説明は、これらの情報につながっていればよく、プレイヤーが原因を言い当てたと証明する必要はありません。
本稿では、架空の教材用事例「遅れて届く通行コード」を使います。宇宙ステーションの記録保管担当者リン・チョーは、輸送艇が出発する前に紙の航行図を受け渡し区画へ届けなければなりませんが、途中で入退室設備が故障します。登場人物、ルール、分岐はすべて独自に作った架空の設定です。実際のユーザー事例、テスト結果、製品機能ではなく、実在する機器の操作にも対応していません。
成功の見込みを推定できなくても、選択肢は比較できます。行動後にどれだけ余地が残るか、どの機会を手放すか、何を明らかにできるかを比べればよく、未知の部分を確率で埋める必要はありません。
観察、解釈、期限を分けて書く
リン・チョーがカードをかざすと、画面には「リクエストを受信しました」と表示されますが、扉は動きません。通信機の向こうの当直担当者は「表示が遅れているだけかもしれない」と言います。ただし、担当者から扉の前は見えません。輸送予定の掲示板では、受け渡し期限までのカウントダウンが残り二目盛りになっています。
確認できるのは画面の文言と扉の位置です。扉側が命令を受信したか、命令が実行されたかは確認できません。「リクエストを受信しました」は「解錠しました」と同じではありません。扉が動かないことだけでは、命令が実行されていないとも証明できません。当直担当者が示しているのは一つの解釈にすぎません。一方、カウントダウンは輸送予定に由来し、故障の原因とは無関係です。
選択前には、架空の時間ルールをすべて示す必要があります。受信確認を一度調べると一目盛り分の時間を使います。脇の通路を使う経路は、出発から受け渡し完了まで合計二目盛り分です。現地での通行許可リクエストは一度だけ試せて、一目盛り分を使い、送信後は取り消せません。この一目盛り分にはリクエストの処理に加え、扉が間に合うように開いた場合の通過と受け渡しも含まれます。受け渡し区画は扉のすぐ向こうにあり、その時間枠の終了時に完了しても期限内です。扉が間に合うように開かなければ、この方法では受け渡しを完了できません。ルールは端末の案内や経路表示で示せますが、現実の所要時間を表すデータではなく、リクエストの成功を保証するものでもありません。
作者は「命令が扉側に届いていない」と「扉側は受信したが実行していない」という二つの仮説を、暫定的に置いておいてもよいでしょう。ただし後者でも、実行状態はまだ立証されていません。この二つで故障の可能性を網羅しているわけではなく、命令は実行されたのに扉が動いていない可能性も排除できません。手元の手がかりで優先順位をつけられないなら、「おそらく前者だ」と書いたり、登場人物の自信を証拠の代わりにしたりしないことです。
そのまま使える選択カード:三つの基本情報
選択カードでは、確認済みの事実、未解明の点、行動とその限界という三種類の情報を整理します。下の表は二列で記入する形式です。同じ判断時点で各選択肢に共通して使えるのは最初の二行だけで、それ以外は行動ごとに記入します。結果が返ってきたら、共通情報も更新します。プレイヤーに見せるときは、会話やボタンの説明に短くまとめてもかまいません。
| 項目 | この事例での記入内容 |
|---|---|
| 確認済みの事実 | 画面に受信済みと表示された。扉は動いていない。受け渡しまで残り二目盛り |
| 未解明の点 | 扉側が命令を受信したか。命令が実行されたか。なぜ扉が動いていないのか |
| 行動と取り消せる範囲 | 現地の受信確認を調べる:読み取り終了後に別の行動へ切り替えられるが、使った一目盛り分の時間は戻らない |
| 行動で何がわかるか | 今回カードをかざした操作に対応する受信記録が扉側にあるか。命令の実行や、扉が開くことまでは確認できない |
| 終了条件 | 受信確認または「記録を利用できません」が表示されたら終了し、自動では再試行しない |
| 失うもの | 残り一目盛りとなり、脇の通路では受け渡しに間に合わなくなる |
| 次の判断 | 待ち続ける、現地での通行許可を求める、受け渡しに間に合わないことを受け入れる。待って間に合うかは依然不明 |
行動欄には、「現地での通行許可リクエスト:送信前なら断念できるが、送信後は取り消せない」のように、不可逆な行動も書けます。「元に戻せる」と言うなら、何を戻せるのかを具体的にする必要があります。読み取りを終了できても、時間が戻るわけではありません。元の場所に戻れても、輸送艇がまだ待っているとは限りません。単に「取り消し可能」と表示するだけでは、失うものが見えなくなります。
ひな型は一文にまとめられます。「確認できているのは____、まだわからないのは____、今から____を行えば____がわかり、____までは中止できるが____を越えると取り消せず、中止しても____は戻らない」。調査の目的や、取り消し可能な段階がない場合は、そのとおりに明記します。
一枚のカードで三つの異なる決断を支える
リン・チョーには三つの行動候補があります。「受信確認を調べる」は、一目盛り分の時間を使って未解明の範囲を絞る機会を得ますが、記録を利用できない可能性があります。「すぐに脇の通路へ向かう」は、事前に示された合計二目盛り分の時間で受け渡しを完了し、この扉の調査はしません。「現地での通行許可リクエストを送信する」は、一目盛り分の時間を使って元の経路を通れるよう試みますが、リクエストが受け付けられても扉が動く保証はありません。
三つはそれぞれ、調査、期限内の受け渡し、元の経路を使う試みに対応しています。脇の通路は見通しの立つ経路ですが、故障の疑問を同時に解決することはできません。調査に物語上の価値を持たせたいなら、リン・チョーには異常の記録を残す役目もあると、前もって説明できます。脇の通路を選んだあとで「調査しなければ減点」という条件を追加してはいけません。
受信確認を調べた場合を考えてみます。「扉側に受信記録あり」と返され、その時刻が直前にカードをかざした時刻と一致しました。確認済みの事実には「扉側が今回の命令を受信した」を加えられ、未解明の点からは受信の有無を外せます。ただし、命令が実行されたか、なぜ扉が動かないかは残す必要があります。受信記録は「受信したが実行しなかった」ことの証明ではなく、まして故障原因を突き止めたわけではありません。結果の文面は、たとえばこう書けます。「受信時刻は、さっきカードをかざした時刻と一致している。扉はまだ動かず、受け渡しまでのカウントダウンが一目盛り減った」。
この時点で残りは一目盛りなので、脇の通路では間に合いません。現地での通行許可リクエストには、まだ期限内に受け渡せる可能性が残っています。扉が間に合うように開いたあとの通過と受け渡しも、その一目盛り分に含まれると事前に示してあるからです。ただし、時間内に開く保証はありません。試行を続けるとは、送信後は取り消せないことを受け入れることです。試行をやめるとは、その条件を引き受けないことです。どちらも、成功の見込みがより高いと主張する必要はありません。理由は、その時点の目標と行動の限界から生まれます。
情報が増えなくても、結果を省略しない
別の展開では、受信確認に「記録を利用できません」と表示されます。これは「扉側が受信していない」「命令が実行されていない」という証拠ではなく、当直担当者がうそをついた証明にもなりません。確認済みの事実に加わるのは「今回は記録を読み取れなかった」だけです。それまでの故障に関する問いは残す必要があります。
調査が実らなかったあとも、残り一目盛りと、選べる行動を示します。脇の通路では時間内に到着できず、現地での通行許可リクエストは先ほどの条件でまだ試せて、待った場合の結果は依然不明です。読み取りがなかったことにしたり、こっそり時間を戻したりして、先に調べる行動が常に有利になるようにしてはいけません。原因がわからないまま終わることも、有効な結果です。ただし、記録を利用できない可能性を事前に伝えていることが前提です。
結末からさかのぼって判断の良しあしを決めることも避けましょう。脇の通路へ向かったあとで元の扉がひとりでに開いても、それが示すのは、あとになって扉が開いたということだけです。その時点で迂回を選んだのが愚かだった証明にはなりません。事前に見いだせる待機の根拠がなかったなら、「もう少し待てばよかった」は登場人物の気持ちにはなっても、作者の結論にはできません。
逆向きに点検して、説明が証拠を越えないようにする
書き終えたら結末を隠し、選択前の情報だけを見て、各選択肢に「これを選ぶ。なぜなら……」と理由を添えてみます。「作者が報酬をくれるから」としか書けないなら、目標、制約、行動の限界を補います。理由がまったく同じなら、選択肢を統合するか、それぞれが残す機会を変えます。
次は結果の記述だけを読みます。新たに確認済みとした事実は、観察に裏づけられているでしょうか。解決していない問いは、未解明の欄に残っているでしょうか。「扉が動かない」を「命令が実行されていない」にすり替えたり、「受信済み」を「実行済み」に変えたりしていないでしょうか。「やはり」「間違いなく」「無難な選択」といった言葉で、推測を事実に格上げしていないでしょうか。所要時間が到着と目標達成までを含み、送信操作だけの計算になっていないかも確かめます。
このカードは、情報と行動の余地を比較する場面に向いています。感情を表すせりふの一つひとつに当てはめる必要はありません。物語に取り消せない決断が必要なら、どこから先は引き返せなくなるのかを正直に書けば十分です。どの選択肢にも根拠がなく、引き受けることに違いもなく、見分けられる結果もないなら、カードを使っても当てずっぽうの選択は救えません。まず判断に必要な情報を増やすか、プレイヤーの判断を求めない語りに変えましょう。


