小さな画面に一度にどこまで物語を表示するか:判断の目的に合わせて文章を分ける
スマートフォンの物語は、一定の文字数だけで区切るべきではありません。原稿を「事実・行動・選択」に分類し、判断材料を選択肢の近くに置き、今の判断に関係しない背景は行動の後に移します。

まず何を決めるのかを定め、それから表示する量を決める
スマートフォンで修理手順と背景描写が入り交じっているなら、まずプレイヤーが今答えるべき問いを書き出し、その問いを軸に文章を分けます。一度に読むまとまりで、現状を把握する、行動を実行する、複数の道筋を比較するといった明確な課題に取り組めるようにします。長さは課題に応じて決めるもので、「一画面に何行入れるか」だけでは決められません。
実践しやすい方法は、まず各文を「事実・行動・選択」に分類し、背景が今の判断に影響するかを確認することです。影響するものは残し、人物の過去を補うだけなら後ろに移します。事実と行動を同じまとまりに入れても構いません。ただし、回想を読み終えてから、その前に実行すべき手順が埋もれていたと気づく構成は避けます。
ここでは「読むまとまり」と「画面」を区別します。前者は意味のまとまった単位で、後者は端末、文字サイズ、画面設計に左右されます。一つのまとまりが改行やスクロールを伴ってもよく、無理に一画面に収める必要はありません。文章を分けるたびに、クリックを一回増やす必要もありません。
以下では、架空の教材例「古い劇場の記憶箱を修復する」を使います。記憶箱と修理のルールは、いずれも本稿のための設定です。実際の利用者の事例、検証済みの結果、製品機能ではなく、現実の機器の修理方法にも対応していません。
元の原稿を見る:背景が判断材料を埋もれさせる仕組み
この設定では、主人公のアーホーが記憶箱を修復し、先生が残した録音を取り出そうとしています。復旧方法は二つあり、両立はできません。古い音声を残すか、古い音声を消去して今夜の時報を復旧するかです。まず、意図的に情報を混在させた原稿を見てみましょう。
雨粒が古い劇場の窓ガラスをたたき、アーホーは、先生がいつも終演後に残って鐘の音を聞いていたことを思い出した。机の上の記憶箱では月の紋様が光り、星の紋様の明かりは消えている。まず月の紋様の板を中央の空き溝に移し、文字窓に「旧音声あり」と表示されるのを待たなければならない。先生は、この劇場の鐘の音が、迷った人を扉まで導いてくれると言っていた。次にこだまの板を入れると先生の録音を残せるが、今夜は時報を鳴らせない。朝光の板を入れると今夜の時報は復旧するが、録音は消去される。アーホーは先生が残したマフラーに触れ、試してみようと決めた。
問題は、単に長いことではありません。「まず月の紋様の板を移す」は、これから実行する行動なのに、雨の描写と回想に囲まれています。「旧音声あり」は行動後の結果なのに、操作の説明の中に先回りして埋め込まれています。最後の「試してみよう」も、どちらを選ぶのかを示していません。
原稿を分解するときは、次のように分類できます。月の紋様が点灯し、星の紋様が消灯しているのは現在の事実。月の紋様の板を動かすのは行動。文字窓の表示は完了後に判明する新しい事実。二種類の板の効果と代償は選択の判断材料です。先生と鐘にまつわる過去は感情面での理解に関わるため残せますが、行動と結果の間に挟む必要はありません。
もう一つ、必ず守るべき順序があります。行動をまだ実行していない段階では、予想される結果として伝え、すでに起きた状態として書いてはいけません。ここが曖昧だと、各段落が短くても、読者は自分がどこまで進めたのか分からなくなります。
修正稿:事実・行動・選択にそれぞれの置き場を作る
最初のまとまりは状況の把握を担います。情景は一文に圧縮し、対象を省略せずに書きます。
雨粒が古い劇場の窓ガラスをたたいていた。記憶箱では月の紋様が光り、星の紋様の明かりは消えていた。中央の溝には、まだ何も入っていない。
次の手順:月の紋様の板を中央の空き溝に移す。
ここで決められている行動は一つだけなので、明確な操作手段を用意すればよく、物語の分岐に見せかける必要はありません。行動が完了してから、二つ目のまとまりを示します。
月の紋様の板が溝にはまり、文字窓に「旧音声あり」と表示された。先生が残した録音は、まだ残っている。
アーホーはマフラーを握りしめた。先生はいつも終演後に残り、最後の鐘の音を聞き終えてから帰っていた。
回想を結果の後に置くのは、「録音がまだ残っている」ことに感情的な重みを持たせるためです。修理の指示を遮らず、後に続く道筋の説明の代わりにもなっていません。三つ目のまとまりは、判断を支えることに集中させます。
今入れられる板は一枚だけです。完了後は交換できません。
こだまの板を入れる:先生の録音を残せますが、今夜は時報を鳴らせません。
朝光の板を入れる:今夜の時報を復旧できますが、先生の録音は消去されます。
選択:こだまの板を入れる/朝光の板を入れる。
重要な代償が選択肢のすぐそばにあるので、最初のまとまりまで戻って探す必要がありません。こだまの板を選んだ場合は、「文字窓に『旧音声を保持』と表示され、今夜の時報欄が消灯した」と続けられます。朝光の板なら、「時報欄が再び点灯し、旧音声の一覧は空になった」と書けます。これは作者向けの分岐例であり、システムがこれらの状態を自動で保存したり、反映したりするという意味ではありません。
この修正には編集上の代償もあります。元の原稿にあった「鐘の音が迷った人を扉まで導く」という設定を、いったん外しています。それが時報の価値を判断する材料になるなら、選択前の共通の状況説明に戻すべきです。単なる劇場の言い伝えなら、後の場面に回せます。残すかどうかは物語での役割に応じて判断し、「背景はすべて削る」という扱いにはしません。
再利用できる成果物:判断用段落カード
ほかの原稿で情報が混在している場合も、各ノードについて次のカードを埋められます。編集用のカードなので、項目名をすべて読者に見せる必要はありません。
| 項目 | 記入する内容 | この例での記入 |
|---|---|---|
| 今の課題 | 一つの疑問文で、このまとまりの目的を限定する | 録音を残すか、時報を復旧するか? |
| 必須の事実 | 道筋を比較するために欠かせない情報 | 旧音声は残っている。二つの道筋は両立しない |
| これから行う行動 | 対象と実行条件を明示する | 確認後、選んだ板を入れる |
| 選択と代償 | 各道筋で得るものと失うものを書く | 録音を残すと時報が止まり、時報を復旧すると録音が消える |
| 背景の配置先 | ここに残すか、具体的な移動先を書く | マフラーの回想を文字窓の反応の後に移す |
| 次に引き継ぐ事実 | 次のまとまりが前提にできる新しい状態 | 旧音声が保持された、または消去された |
記入後は、設定した課題に照らして本文を確認します。「今の課題」と対応する本文だけを読んで、答えるための判断材料がすべて見つかるでしょうか。代償を探すためにかなり前の箇所へ戻る必要があるなら、その情報を短くまとめて選択肢の近くに置きます。必要な情報は、ここでもう一度示して構いません。たとえば、前の箇所にある「先生が残した声」を「先生の録音」に統一することで、同じものを指すかどうかを読者が判断する負担を減らせます。
さらに、紙上で流れをたどります。読者が二つ目のまとまりの後で中断し、三つ目から読み始めると仮定します。そこには二種類の素材、用途、代償がすべてそろっているため、記憶を頼りに比較条件を復元する必要はありません。ただし、この確認で見つけられるのは文章の情報依存関係だけです。スマートフォンでの読書体験が検証済みだと証明するものではありません。
まとめるべきときと、別の見せ方に変えるべきとき
修理の道筋が一つだけで、資源の取捨選択もないなら、「状態・行動・結果」を順に一つの短いまとまりに書き、選択欄をなくせます。機械的に三枚のカードへ分けると、単純な行動のために何度も「続ける」を押すことになります。二つの道筋で複数の条件を比べる必要があるなら、並列のリストに変えてもよいでしょう。まず条件同士が対応するようにそろえ、それから文章の長さを調整します。
よくある失敗は、空行を増やしただけで、「それ」「その場所」の指す対象が別のまとまりにあるままになっていることです。代償を背景説明へ移し、ボタンの近くには素材名しか残さない失敗もあります。また、各ページの末尾に新たな制約を隠し、プレイヤーが判断を固めた直後に覆させる場合もあります。修正では対象を明記し、制約を早めに伝えるべきで、さらに文を短くするだけでは解決しません。
適用の限界も明確にします。文字を大きくして一画面に収まらなくなっても、必要な条件を削らなければならないわけではありません。スクロールを許容しつつ、実際のレイアウトで選択肢と判断材料を照合しやすいか確認する必要があります。物語が意図的に素材の効果を隠しているなら、十分な情報に基づく比較だと装わず、不明であること自体を読者に伝えます。
最終的な成果物には、分類を付けた元の原稿、修正稿、段落カードを含めます。これにより作者は、それぞれの区切りがどの判断を支えるのか、どの事実を判断前に示す必要があるのかを説明できます。


