翻訳したセリフが原文より長いとき、物語の条件を削らずに短くするには?
まず否定、条件、例外、動作の対象を押さえ、それから儀礼的な表現や重複を削ります。一文ずつの修正表と反例による確認で、短いセリフでもプレイヤーが同じ選択をできるかを確かめます。

削る言葉を決める前に、物語上の判断を支える関係を押さえる
翻訳したセリフが音声の尺や字幕の表示領域に収まらないときは、まず各文を「誰が、どの条件で、何をしてよい/してはいけないか」に分解し、その関係を保ったうえで表現を短くします。短縮が適切かどうかは、長い版と短い版のそれぞれで、プレイヤーが実行可能な行動を誤って判断しないかで決まります。文字数を減らすことは、それとは別の要件です。
誤って削りやすいのは、「ない」「〜の場合に限り」「同時に」「まだ」「前に」といった短い表現です。儀礼的な言い回しを削っても、通常は口調が変わるだけですが、「〜の場合に限り」という限定を落とすと、制限付きの許可が無条件の約束に変わりかねません。そこで、まず必須情報、次に変更可能な表現を示し、最後に削除できない箇所を囲みます。ここでいう「削除できない」とは、意味を残す必要があるということで、言い換えは可能です。
以下の資料室の会話は、解説のための架空の例です。実際の利用者の事例、実測結果、製品の機能ではありません。中国語の読者が確認しやすいよう、原記事では外国語の長い訳文を中国語で説明しており、ここではその説明を日本語に訳しています。この例が説明するのは修正の方法であり、いずれかの翻訳先言語で音声や字幕の制限を満たしたことを証明するものではありません。
一文ずつの表で、ルールと口調を分ける
設定:旅人が管理人に資料室への入室を申請します。通常の入室には、押印済みの通行証と名簿への登録の両方が必要です。警報中は通常の入室許可を停止し、隊長直筆の許可証を持つ人だけが入れます。警報が解除されると通常のルールに戻ります。これらは例の設定としてあらかじめ定めた条件であり、短縮の際に付け足すものではありません。
修正に取りかかる際は、原文の意図、長い訳文の意味、短縮稿を並べます。長い訳文だけを見て文字を削ってはいけません。訳文ですでに条件がずれていれば、そのずれも残ってしまいます。
| 文番号 | 長い訳文の中国語による説明の日本語訳 | 必須情報と意味を削除できない箇所 | 変更可能な表現 | 短縮稿 |
|---|---|---|---|---|
| 甲 | 大変申し訳ありませんが、押印済みの通行証を提示し、なおかつ名簿にも登録されていなければ、資料室にはお通しできません。 | 押印済みの通行証、名簿登録。両方を満たして初めて入室可能 | 謝罪、主語の繰り返し、すでに明確な場所の正式名称 | 通行証の押印と名簿登録、両方がなければ通せません。 |
| 乙 | ただし、警報が解除されていない間は、先ほどの二つの条件を満たしていても、隊長が直筆で書いた許可証を持っていない限り、お通しできません。 | 警報未解除。通常の条件では入室不可。直筆の許可証が例外 | 逆接の前置き、前の文の条件の長い繰り返し | 警報が解除されるまでは、隊長直筆の許可証がある方だけ通せます。 |
| 丙 | 入室が認められた場合でも、これらの資料を閲覧できるのは資料室の中だけで、外へ持ち出すことはできません。 | 入室許可は持ち出し許可ではない。閲覧場所。資料の持ち出し禁止 | 資料名の繰り返し、入室許可についての前置き | 資料の閲覧は室内のみ。持ち出しは禁止です。 |
乙をこう直せるのは、この例では、警報中は直筆の許可証だけで入室資格を満たすと明示しているからです。元の設定が「通常の二条件に加えて直筆の許可証も必要」であれば、短縮稿も「警報が解除されるまでは、二条件に加え、隊長直筆の許可証も必要です」としなければなりません。どちらも短いからといって、同じルールとして扱うことはできません。
重複を削り、構文を変え、最後に文を分ける
最初は、物語上の役割を持たない重複だけを削ります。甲の「資料室に入る」は、その会話で扱う入口が一つだけなら「通す」に縮められます。同じ場面に閲覧室や保管庫もあるなら、場所を残し、どの扉なのかをプレイヤーに推測させてはいけません。
次に構文を調整します。甲では、「〜し、なおかつ〜していなければ」を、二条件を挙げてから「両方がなければ通せません」とまとめる形に変え、両方が必要という関係を残しています。一方、誤った短縮稿「押印済みの通行証があれば入れます。名簿も確認しておきます」では、名簿登録が付随的な手続きに格下げされています。文は滑らかでも、入室資格が変わっています。
文を分けることを考えるのは三段階目です。乙は「警報が解除されていないので、通常の証明書は無効です」と「隊長直筆の許可証がなければ入れません」に分けられます。両方を、プレイヤーが選択する前に最後まで提示する必要があります。一文目が流れた時点で選択できてしまうと、例外は台本には残っていても、プレイヤーには間に合っていません。
人物の口調にも少しだけ余地を残します。管理人にためらいを感じさせる必要があるなら、「申し訳ありません」を残せます。そのためらい自体が、管理人は旅人を知っているという暗示なら、単なる儀礼表現としてすべて削ることはできません。守るべきなのはその演技が担う意味であり、丁寧な言葉を一律に残すことではありません。
反例を使い、短縮稿がひそかに制限を緩めていないか確かめる
修正後は、ひとまず響きの良し悪しを脇に置き、長い版と短い版に同じ状況を与えて、それぞれで許される行動を書き出します。この例では、次の確認表をそのまま使えます。
| 状況 | 元の設定で導かれるべき判断 |
|---|---|
| 警報なし。押印済みの通行証はあるが、名簿に名前がない | 入室不可 |
| 警報なし。名簿に名前はあるが、通行証は未押印 | 入室不可 |
| 警報なし。通常の二条件を満たしている | 入室可 |
| 警報中。通常の二条件を満たしているが、直筆の許可証はない | 入室不可 |
| 警報中。隊長直筆の許可証はあるが、通常の二条件はそろっていない | 入室可 |
| 入室許可は得ており、資料を室外へ持ち出したい | 持ち出しは依然として不可 |
この表は、複数条件の同時充足、ルールの優先順位、例外、権限の範囲を確認するためのものです。短縮稿でどれか一行でも答えが変わるなら、対応する文に戻って修正します。会話全体を書き直す必要はありません。
否定の対象も確認します。「資料を持ち出してはいけない」が禁じるのは持ち出しです。「資料に触るな」に変えると、通常の閲覧まで妨げてしまいます。「直筆の許可証がなければ入れない」も、「許可がなければ来るな」には縮められません。後者では、問い合わせすら禁止されていると受け取られる可能性があります。反例による確認が扱えるのは、挙げた状況だけです。これをもってすべての曖昧さを解消したとは言えません。
それでも収まらない場合は、提示方法を調整して限界を記録する
意味の確認が済んだら、翻訳先の言語で表示領域や尺に収まるかを確認します。字幕は実際のレイアウトで改行位置と表示時間を見て、否定表現とその対象となる動作ができるだけ同じ画面に収まるようにします。音声は、その言語での読み上げ、間、人物の演技を含めて確認します。中国語の文字数で外国語の発話時間を代用することはできず、台本が短くても、速く話せるとは限りません。
まだ制限を超えるなら、表示時間を延ばす、条件を連続する二文に分ける、前もって一度明確に説明しておく、といった方法があります。事前説明が使えるのは、プレイヤーが実際に受け取れ、現在も有効な情報に限ります。重要な例外をスキップ可能なサブシナリオに移し、全員が知っている前提にはできません。
尺、ショット、テキストの配置がすべて固定され、条件にも削れる部分がないなら、「現在の表示領域と尺ではルールを完全には伝えられない」と記録し、場面の設計に戻して調整します。「直筆」を削って一般的な許可にしたり、「両方必要」を「どちらか一方でよい」に変えたりするのは、表示領域や尺の不足に対する適切な解決にはなりません。
そのまま使える引き継ぎ項目は次のとおりです。原文の意図|翻訳先言語の短縮前の訳稿|必須情報|変更可能な表現|意味を削除できない箇所|短縮稿|適用される文脈|反例での判断|表示領域・尺について今後確認する項目。まず最も長い一文について記入し、前後のセリフにも広げます。こうすれば、短いセリフだけでなく、次の修正担当者が越えてはいけない物語上の境界も引き継げます。


