テキストアドベンチャーで同じ物を調べ直すとき、変化の一文で前の描写につなぐには
同じ物を調べ直すときは、対象を見分けられる短い表現を残し、プレイヤーがまだ読んでいない現在の違いを添える。変化がなければ、状態が続いていると伝える。陶器の湯沸かしを例にした調べ直し用の差分原稿で、世界の現状と前回プレイヤーに示した状態を分け、初回・変化後・変化なしの文章を書き分ける。

はじめに
同じ物をもう一度調べるときは、それと分かる識別の手がかりを残し、前回プレイヤーが見た状態との違いを現在の描写として書く。本当に違いがなければ、状態が続いていることを明確に伝える。毎回全文を繰り返すのも、何を指すか分からない「湯気が出ている」だけにするのも避けたい。何を書くかは、プレイヤーがすでに何を読み、今何が見えるかで決まる。
以下では、使い回せる「物を調べ直すための差分原稿」を示す。陶器の湯沸かしと調べる過程は、いずれも解説のために作った架空の例であり、実際のユーザー事例、実測結果、筆者自身による動作検証ではない。また、DramaForkの製品機能を示すものでもない。状態と文章はすべて本稿で設定したものだ。
識別情報と現在の状態を切り分ける
この例の湯沸かしは灰色の陶器製で、取っ手に麻ひもが巻かれ、炉の台に載っている。初めて調べたときの文章はこうなる。「炉の台に、灰色の陶器の湯沸かしが載っている。胴は丸く、注ぎ口は短い。取っ手には麻ひもが巻かれている。蓋は閉じており、注ぎ口から湯気は出ていない。」この文章で、対象の紹介と現在の状態の説明を同時に行っている。
このうち「灰色の陶器の湯沸かしで、取っ手に麻ひもが巻かれている」は、識別の手がかりになる。「胴が丸く、注ぎ口が短い」は、初回に姿を思い描くための補足なので、毎回入れる必要はない。「注ぎ口から湯気は出ていない」は、状態に応じて差し替える文だ。炉の台に載っていることや蓋の開閉も、初回に書いたからといって永久に変わらない属性として扱ってはいけない。
短い応答に識別情報をどれだけ残すかは、取り違えやすさによる。その場に湯沸かしが一つしかなければ、「灰色の陶器の湯沸かし」だけで十分かもしれない。灰色の陶器の湯沸かしがもう一つあるなら、麻ひもを巻いた取っ手も残す。ここでは比較しやすいように、「取っ手に麻ひもを巻いた灰色の陶器の湯沸かし」で統一する。後で麻ひもが外されたなら、識別の手がかりも更新する必要がある。文型を揃えるために、事実と違う特徴を残してはいけない。
世界の現状と前回見せた状態を別々に記録する
差分原稿には二つの記録が必要になる。世界の現在の状態と、プレイヤーが前回実際に読んだ、目に見える状態だ。前者は今何が成り立っているかを決め、後者は何を「まだ」「もう〜ない」「〜し始めた」と表現できるかを決める。作者が湯沸かしを加熱したと知っていても、プレイヤーが湯気の描写を読んだことにはならない。
この例では、まず調べる順番を決めておく。初回は湯気が出ていない。加熱する出来事の後、世界の状態が「薄く湯気が出ている」に変わる。二度目に調べると、その変化が示される。その後は新しい出来事がなく、三度目には薄い湯気が出続けていると確認する。この順番は解説上の設定にすぎず、ゲームエンジンの仕組みには関わらない。
| 差分原稿の項目 | 二度目に調べる場合の記入内容 |
|---|---|
| 識別の手がかり | 灰色の陶器の湯沸かし。取っ手に麻ひもが巻かれている |
| 世界の現在の状態 | 炉の台の上にあり、蓋は閉じていて、注ぎ口から薄く湯気が出ている |
| 前回示した見た目の状態 | 炉の台の上にあること、蓋が閉じていること、湯気が出ていないことをプレイヤーが読んでいる |
| 今回の違い | 前回見た状態と比べ、注ぎ口から湯気が出ていなかったのが、薄く出る状態に変わった |
| 残す文 | 取っ手に麻ひもを巻いた灰色の陶器の湯沸かしは、今も炉の台に載っている。 |
| 差し替える文 | 注ぎ口から、ひと筋の薄い湯気が立ち上っている。 |
この表はほかの物にも使える。まず二つの状態を記入し、識別の手がかりを選び、最後に残す文と差し替える文を書く。前回示していない情報には「未提示」と記入し、世界で起きたことを使って埋め合わせない。文章を表示した後で、今回明記した情報を、プレイヤーに示した内容の記録に加える。省略した細部まで、自動的に再確認したことにはできない。
三回の確認に対応する原稿を作る
初回は対象の姿を伝える役割があるため、詳しく書いてよい。二度目は対象を見分けられ、変化が読めればよい。三度目は同じ要求に応え、余計な進展を作り出さない。
| 調べるタイミング | 前回示した見た目の状態 | 今回の違い | 残す文と差し替える文を組み合わせた応答 |
|---|---|---|---|
| 初回 | 記録なし | 初めて対象を認識する | 炉の台に、灰色の陶器の湯沸かしが載っている。胴は丸く、注ぎ口は短い。取っ手には麻ひもが巻かれている。蓋は閉じており、注ぎ口から湯気は出ていない。 |
| 加熱後 | 湯気が出ていない状態を見ている | 注ぎ口から薄く湯気が出ている | 取っ手に麻ひもを巻いた灰色の陶器の湯沸かしは、今も炉の台に載っている。注ぎ口から、ひと筋の薄い湯気が立ち上っている。 |
| もう一度調べる | 薄く湯気が出ている状態を見ている | 新たな見た目の変化はない | 取っ手に麻ひもを巻いた灰色の陶器の湯沸かしは、今も炉の台に載っている。注ぎ口からは相変わらず薄い湯気が出ており、前回調べたときと同じだ。 |
二度目も材質、形、取っ手、蓋の説明を丸ごと繰り返し、最後に湯気の描写を付け足すと、プレイヤーは全文を読み比べ直す必要がある。反対に「ひと筋の薄い湯気が立ち上った」だけでは、その応答を単独で読み返したとき、どの物のことか分かりにくい。識別の手がかりを添えた差分表現は、以前の情報を少し残すことで、対象と変化した箇所の両方を明確にする。
残す文と差し替える文は編集上の単位であり、必ず二文に分ける必要はない。短くしたいなら、「取っ手に麻ひもを巻いた灰色の陶器の湯沸かしの注ぎ口から、ひと筋の薄い湯気が立ち上っている」とまとめられる。場所を省いてよいのは、場所が変わっておらず、現在の識別や行動にも影響しない場合だ。
途中を見逃した場合は、プレイヤーが見た内容だけを受け継ぐ
別の説明用の例では、プレイヤーが初めて調べる前に、すでに湯沸かしが加熱されていたとする。この場合、「それまで静かだった注ぎ口から湯気が出始めた」とは書けない。「それまで」の状態は、まだプレイヤーと共有されていないからだ。初回の描写を示し、状態の文を「注ぎ口から、ひと筋の薄い湯気が立ち上っている」に変える。初回の詳しい紹介が必要かどうかは、何を見せたかの記録で決まり、世界でそれまでに起きた出来事の数では決まらない。
今度は、プレイヤーが湯気の出ていない状態を見てから立ち去ったとする。その間に湯気が出て、再び出なくなり、プレイヤーが戻ってきてから調べる。現在の状態は前回見た状態と同じなので、「ようやく湯気が出なくなった」とは書けない。例えばこう書ける。「取っ手に麻ひもを巻いた灰色の陶器の湯沸かしは、今も炉の台に載っている。注ぎ口から湯気は出ておらず、前回調べたときと同じだ。」これは、途中で一度も変化しなかったと述べているわけではない。
この書き方では、プレイヤーが見逃した過程は省かれる。物語上、その過程を知る必要があるなら、目に見える痕跡や登場人物の説明など、根拠のある伝達手段を別に書き、その根拠を物語の中に設ける。普通に調べただけで、知りようのない過去の全容を補ってはいけない。差分原稿が扱うのは目の前の応答であり、出来事の完全なログではない。
変化がなければ余計な含みを持たせず、大きな変化には字数を使う
変化がないときは、「今のところ何も見つからない」より、具体的な状態を伝える方が明確だ。「今のところ」「〜のようだ」「もっとよく見てみよう」といった表現は、単なる確認を、まだ終わっていない探索のように見せやすい。今回の要求が外観の確認だけなら、注ぎ口から薄い湯気が出続けていることを伝える。ついでに中には手がかりがないと断言したり、何度も調べれば必ず新しい発見があると約束したりしない。
一度に複数の変化が起きたら、次の判断に影響する情報を先に書き、必要な識別情報を補う。例えば湯沸かしの場所が変わり、蓋も開いているなら、「今も炉の台に載っている」は残せない。一文に収めるために、蓋が開いたことを落とすのも避ける。すでに割れていて、短い識別表現だけでは新しい姿を伝えられないなら、破片がどう散らばっているかを改めて描写してよい。長さは、対象を認識するために必要かどうかで決める。
原稿を渡す前に、順番どおりに調べる、加熱後に初めて調べる、変化を見逃してから再び調べる、という三つの経路を手作業でたどる。「今も」「相変わらず」「それまで」「もう〜ない」に当たる表現を一つずつ丸で囲み、すでに提示した文章で裏付けられるか確認する。さらに前の段落を隠し、短い応答だけで対象を見分けられるか確かめる。以上は、これから実施するための確認方法である。作品に信頼できる提示内容の記録がないなら、識別の手がかりを添えて現在の状態を描き、記憶に依存する比較表現は控えめにする。






