テキストアドベンチャーで入れ子の容器を描写するには:物がどの階層にあるかを伝える
まず各アイテムが直接入っている容器を明示し、隣接関係、遮蔽、現在見えるものを分けて記述します。スーツケース、布袋、外ポケットの架空の例を使い、曖昧な文章を、一段ずつ調べる手がかりになる容器の階層設定へと書き直します。

はじめに
入れ子になった容器を描写するときは、まず物が直接どこに入っているのかを明示し、その後で何に隣接し、何に遮られ、今どこまで見えているのかを説明します。「スーツケースの中」だけでは、大まかな場所しか伝わりません。鍵を取り出すには、布袋のどのポケットに入っているのか、先に袋の口を開ける必要があるのかも、読者に分かる必要があります。
以下では、容器の階層をまとめた設定稿を使って、書き直し方を示します。スーツケース、布袋、鍵は、いずれも説明のために独自に作った架空の設定です。実在のユーザー事例、実測結果、自らテストした記録、DramaForkの製品機能を示すものではありません。
1.曖昧な文を、確認できる関係に分解する
書き直す元の文は、「スーツケースの中の布袋のそばに鍵があり、中にはマフラーも押さえつけられている」です。この文からは、位置を一通りに定められません。「そば」は、鍵がケースの底に落ちているとも、単に袋の本体に近いとも読めます。「中」はスーツケースか布袋かが不明で、「押さえつけられている」も、何が何を押さえているのか分かりません。作者の頭には場面が浮かんでいても、読者はその文を頼りに次の行動を決められないのです。
この例では、まず実際の配置を決めます。スーツケースに直接入っているのは、布袋とマフラーです。マフラーは布袋の左側にあり、片端が袋の下に入り込んで、袋の底に押さえられています。布袋の本体の口はひもで固く結ばれ、外側には口の開いたポケットが縫い付けられています。ポケットはケースを開ける人の方を向いています。鍵はその外ポケットに差し込まれ、頭の一角だけがポケットの縁から出ています。
したがって、「袋のそばに鍵がある」を、単に「布袋の隣に鍵が一本置かれている」と整えるだけでは不十分です。読みやすくなっても、位置は間違ったままです。「布袋の外ポケットに鍵が一本差し込まれている」と直す必要があります。これは作者の設定稿に記す完全な関係です。実際にどこまで見せるかは、観察の段階に応じて別途決めます。
推敲では、「中」「そば」「下」を一つずつ拾い、何を基準にしているのかを明示します。それでも二通りの配置が描けるなら、さらに文を分けましょう。判断を読者に委ねないことが大切です。
2.五つの項目で容器の階層をまとめる
次の設定稿は、作者が確認するためのものです。ケースを開けたときの文章として、そのまま全体を表示するものではありません。再利用する際は、項目を残して物と関係を差し替えます。
| 項目 | この例での記入内容 |
|---|---|
| 外側の容器 | スーツケース。初期状態では閉じており、開けると内部を観察できる |
| 直接入っているもの | スーツケース:布袋、マフラー。布袋の外ポケット:鍵。本体内部はまだ描写していない |
| 隣接するもの | ケース内のマフラーは布袋の左側にある。どちらもスーツケースに直接入っている |
| 遮蔽関係 | 布袋の底がマフラーの片端を押さえている。外ポケットの縁と生地が鍵の大部分を隠している |
| 階層ごとの確認 | ケースを開けると布袋、マフラー、ポケットの輪郭が見える。袋を調べると、見えている角が鍵だと分かる。ポケットを調べると鍵の全体が見える |
「直接入っているもの」には、間に別の容器を挟まずに収まっている物だけを書きます。鍵もスーツケースの範囲内にはありますが、布袋と並べて、ケースの底に置かれた二つの物として扱ってはいけません。また、外ポケットは布袋に付属する部分であり、ケース内に別置きされた小袋ではありません。
隣接と遮蔽は分けて記録します。マフラーが布袋の左側にあるというのは位置の説明です。片端が袋の底に押さえられているというのは、重なりと行動の妨げの説明です。「隣にある」だけでは袋を動かす必要があるとは分からず、「押さえられている」だけでは、見えている部分の位置が伝わりません。
設定稿は長くなりますが、その後の文章に明確な根拠ができます。本文の言い回しは短くしても、関係まで省略してはいけません。
3.ケースを開ける、袋を調べる、ポケットを調べる場面をつなぐ
この例では、ケースを開けた時点では全体だけを眺め、布袋を調べるときに近づいて細部を見分けるものとします。ポケットを調べる行動には、その縁をそっと広げる動作を含めます。いずれもこの例での物語上の取り決めであり、何らかのソフトウェアがこれらの操作に標準対応していることを意味しません。
ケースを開けたときの文章:
スーツケースを開ける。中には布袋が一つあり、その左側にマフラーが広げられている。マフラーの片端は布袋の下に入り込み、袋の底に押さえられている。こちらを向いた袋の外側には、口の開いたポケットがある。一方、本体の口はひもで結ばれている。
ここでは、直接入っているもの、マフラーを動かす際の妨げ、さらに調べられるポケットを示しています。布袋の本体内部の物は列挙せず、鍵を早々にケース内の独立した物として描いてもいません。
布袋を調べたときの文章:
布袋はまだスーツケースの中にある。顔を近づけると、本体の口は固く結ばれているが、外ポケットの口は開いている。ポケットの縁から鍵の頭の一角がのぞき、残りは中に隠れている。
ここでは鍵の入っているポケットを明示し、二つの開口部を区別しています。鍵を探す読者には、本体のひもを先にほどかず、外ポケットを直接調べる理由ができます。
外ポケットを調べたときの文章:
布袋の外ポケットの縁をそっと広げ、中をのぞく。鍵は刻みのある部分を下に向け、斜めに差し込まれている。外に出ている頭は指でつまめる。布袋はケースの中に置かれたままで、本体の口を開けなくても鍵を取り出せる。
最後の文は、行動の条件を説明しています。作品に「鍵を取り出す」という操作を用意するなら、その後の文章は「布袋の外ポケットから鍵を取り出す」とし、再び調べたときには、角がのぞいているという元の描写を削除します。見えること、取れること、すでに取ったことは、それぞれ別の状態です。
4.必要な上位の位置を言い直し、反例も推敲に使う
続けて調べるとき、毎回「スーツケースの中の布袋の外ポケットに入っている鍵」と書く必要はありません。新しい階層へ初めて移るときに省略せず示し、その後は、指すものが一つに定まる短い段落の中なら「ポケット」で十分です。調べる対象が変わったとき、容器を動かしたとき、長い会話を挟んだときには、上位の位置を補い直します。
たとえば布袋を取り出した後は、「布袋をテーブルに置く。鍵はまだ布袋の外ポケットに差し込まれている」と書きます。この時点で袋があるのは、もうスーツケースの中ではありません。古い文をコピーすれば矛盾が生じます。言い直す目的は、変化後の所在を伝えることであって、階層を端から機械的に唱えることではありません。
推敲では、次の三つの文を比較用に残しておくとよいでしょう。
- 「ケースの中の袋のそばに鍵がある」:近くにあることしか伝わらず、鍵がポケットに入っているとは分からない。
- 「鍵はケースの中で、布袋に接している」:場所は絞られるが、鍵がケースの底にあるとも読める。
- 「鍵は、ケース内の布袋の外ポケットに差し込まれている」:直接入っている容器が明確で、作者の設定稿に適している。
三つ目の文も、ケースを開けたときの表示にそのまま使えるとは限りません。位置を完全に知っていることと、その時点で観察できることは別だからです。語順を変えれば修飾関係は改善できますが、どこまで見えるかの判断に代えることはできません。
5.行動を言い直して、適用範囲と破綻しやすい点を確認する
原稿を渡す前に、三つの表示文だけを読んで、順番に答えてみます。今は何が見えるか。鍵を探すにはどこを調べるか。本体の口をほどく必要はあるか。取り出した後はどの文を変える必要があるか。この例の文章から導ける答えは、次のとおりです。まずケース内の配置が見え、次にポケットから出た鍵の一角を見分け、縁を広げてから鍵を取り出せると確認します。本体の結び目は鍵を取ることとは無関係です。これは文章の整合性を確かめる作業であり、読者が理解できたかどうかの検証ではありません。
「見えない」を「存在しない」と書き違えていないかも確認します。本体の口が固く結ばれていることから言えるのは、内部がまだ見えていないことだけです。袋の中が空だとは断定できません。逆に、鍵がポケットの奥に完全に隠れている設定へ変えたなら、袋を調べたときの文章に「鍵の頭がのぞいている」を残してはいけません。まずポケットの入口を示し、調べた後に発見する流れを用意します。
階層ごとに書くと、文章を読む回数は増えます。一階層しかなく、中身がすべて見える浅いトレーなら、一文で列挙すれば十分です。わざわざ調べる手順を増やす必要はありません。似たポケットが複数ある場合は、「バックル付きのポケット」「口の開いたポケット」のように変わらない特徴を加えます。袋の向きを変えた途端に、左右の呼び方が通用しなくなるのを防ぐためです。
この設定稿が扱うのは、容器内部での物の位置を文章で伝えることです。部屋やエリアの状態が及ぼす影響範囲は扱わず、場所同士を結ぶ移動経路も定義しません。操作がまだ分かりにくいなら、設定稿に戻り、足りないのが包含関係、遮蔽の条件、可視情報のどれなのかを確かめて、該当する文を直しましょう。






