インタラクティブ映画の制作フローで分岐図を引き継ぐには:ノード契約で入口・行動・出口を明確にする
分岐図は物語の行き先を示し、ノード契約は各段階が成立する根拠を示します。複製して使える引き継ぎカードで、プレイヤーが知り得る情報、行動への反応、状態変化、受け入れ確認の証拠、差し戻し先をプロデューサー・監督・実装担当者に伝えます。

はじめに
脚本家が分岐図を渡す際は、各ノードの「ノード契約」(节点合同)も添えるべきです。入口条件、プレイヤーがそれまでに触れた情報、選べる行動、必ず見える形で示す反応、退出後の状態と担当者を明記します。プロデューサーはこれを基に制作素材の範囲を確認し、監督は演技を組み立て、実装担当者は条件と出口をつなぎます。受け入れ確認では、矢印がつながっているかだけでなく、各取り決めが成立しているかを一つずつ確かめます。
分岐図で渡せるものと、受け手にまだ足りないもの
今回のインタラクティブ映画の制作フローにおける引き継ぎでは、ノード番号、選択肢、結末の方向性が記された分岐図と、それに対応する脚本を入力とします。渡すべきものは、受け手が「ここで何を制作するのか、いつ入れるのか、どう出るのか」を自力で判断できる一式の記録です。
ink公式執筆ガイドでは、分岐と合流の書き方が説明されています。図に合流点があっても、二つのルートが同じ情報や所持品を持って到着するとは限りません。「どちらも当直室へ行く」は成立しても、「どちらも写真を見せられる」とは限らないのです。
本稿で提案するノード契約は、引き継ぎを学ぶために独自に作成した記入表です。法的な契約書でも、業界共通の標準でもありません。以下の短編インタラクティブ・ミステリー映画『終電の落とし物』は完全なフィクションであり、実際のユーザー事例、検証済みの成果、製品機能を示すものではありません。物語では、調査員が閉鎖間際の駅で行方不明の乗客を捜します。重要な判断は、不審な手荷物切符の写真を当直の駅員に見せるかどうかです。
そのまま複製して使えるノード契約
ノードごとに別々に記入し、「未定」の項目には必ず解決担当者を付けます。不明な項目を、説明もなく既定の動作として扱ってはいけません。
| 項目 | 引き継ぎ時に記入する内容 |
|---|---|
| 番号とバージョン | 安定したノード番号、契約のバージョン、対応する脚本のバージョン |
| 入口状態 | 上流ノード、必要条件、進入を認める状態の組み合わせ |
| プレイヤーが知り得る情報 | それまでに実際に提示した手がかりと該当箇所、まだ明かしていない事実 |
| 行動 | 選択肢の文言、選択可能になる条件、時間制限の有無、入力がない場合の処理 |
| 目に見える反応 | 各行動後に必ず提示する映像、台詞、または画面上の確認表示 |
| 出口状態 | 各行動で何を記録・保持・消去し、その後どこへ進むか |
| 制作上の依存関係 | 反応に使う素材番号、共用素材、入口に応じて必要になる差分 |
| 責任と受け入れ確認 | 各項目の担当者、確認ケース、受け入れ確認の裏付け、差し戻し先 |
「プレイヤーが知り得る」とは、作品がその情報に触れる機会を用意したという意味にすぎず、プレイヤーが覚えたり理解したりしたことを保証しません。「登場人物が知っている」「プレイヤーが見た」「現在、証拠を持っている」も区別する必要があります。登場人物は写真の存在を聞いており、プレイヤーも写真を見たことがあっても、登場人物が持つ端末はすでに壊れているかもしれません。この三つを一つの「手がかりあり」にまとめることはできません。
契約は、共同作業の曖昧さを解消できる詳しさで十分です。カメラの設定はショットリストに、動画のエンコード設定は技術チェックリストに記載できます。そのノードの取り決めを変えない限り、同じカードに詰め込む必要はありません。
『終電の落とし物』の当直室ノードを具体的に埋める
「当直室での聞き込み」を第六ノードとします。第五ノードの出口は二つで、手荷物切符を撮影するか、そのまま保管室を出るかです。合流前にはどちらのルートでも「駅は十分後に閉鎖します」と明記された運休のお知らせが提示されています。つまり、閉鎖が迫っているという情報は両ルートで提供済みですが、切符の日付が不自然だと示されるのは撮影したルートだけです。
カードの冒頭には「ノード 06/契約 v1/脚本 v3」と記入します。以下ではまず因果関係の核となる五つの項目を示し、制作上の依存関係と責任・受け入れ確認はリストの後で補います。この五項目だけで契約が完成したと考えてはいけません。
第六ノードの因果関係に関する項目は、次のように記入できます。
- 入口:第五ノードから進入。写真の状態は「保存済み」か「未保存」のみ。当直の駅員にはまだ見せていない。
- 情報:全ルートで「十分後に駅を閉鎖する」というお知らせを提示済み。不自然な日付を提示したのは「保存済み」のルートのみ。写真と行方不明者の関係はまだ明かしていない。
- 行動:保存済みなら「写真を見せる」「終電のことだけ聞く」を提示し、未保存なら「終電のことだけ聞く」のみ提示する。時間制限は設けず、入力がなければそのまま待機し、自動では選ばない。
- 反応:写真を見せると、駅員がスマートフォンに目を向けて「この切符がここにあるはずはない」と言う。終電のことだけ聞くと、駅員は時刻表を指す。どちらも先に、選択を受け付けたことを表示する。
- 出口:見せた場合は「駅員が写真を見た」を記録し、聞くだけなら「見ていない」を保持する。写真の保存状態は元の値を保持し、どちらも第七ノードへ進む。
制作上の依存関係も明記します。共通の聞き込み導入は N06-COMMON-01、選択を受け付けたことを示す表示は N06-UI-01、写真を見せた場合と聞くだけの場合の反応はそれぞれ N06-PHOTO-01 と N06-ASK-01 です。共通の導入にスマートフォンが映っていても構いませんが、画面に切符の写真を表示してはいけません。登場人物が実際に保存した写真を提示するのは N06-PHOTO-01 だけです。そうしないと、撮影していないルートでも理由なく証拠を得てしまいます。第七ノードは「駅員が写真を見たか」を参照し、「さっき見せてくれた切符」または「君が聞いていた列車」で話し始めてから、共通の場面につなぎます。
ここでは、写真を保存したかどうかと、すでに見せたかどうかという二つの事実を分けて保持しています。「写真の手がかり」というタグ一つだけでは、後の展開で「証拠はあるが隠している」と「そもそも証拠がない」を区別できません。
引き継ぎの成立をどう確かめ、不備を誰に差し戻すか
引き継ぎは、まず机上で照合します。脚本家は入口・情報・行動・出口の項目を担当し、契約 v1 と脚本 v3 を提出します。プロデューサーは制作上の依存関係と四つの素材番号を担当します。監督は各反応をどの動作や台詞で表すかを確認し、実装担当者は入口条件と出口状態の記録を提出します。受け入れ確認の裏付けは、まず三件の机上確認記録です。素材が完成したら、四つの番号に対応するプレビューと状態ログを追加します。全員が同じバージョンを受け入れて初めて、追跡可能な制作基準が成立します。
このノードでは、少なくとも「写真なしで聞くだけ」「写真ありで聞くだけ」「写真があり、それを見せる」の三つの確認ケースを用意します。それぞれについて、進入前の状態、表示される選択肢、選んだ行動、期待する反応、退出後の状態、次のノードの最初の台詞を記録します。机上の記録が示すのは、ルールを明確に説明できることです。完成品が取り決めに合っていると示すには、素材完成後に対応するプレビューと状態記録も追加する必要があります。本稿では、これらの確認を実施していません。
不備は項目単位で特定します。「未保存」でも写真を見せるボタンが出るなら、実装担当者に差し戻して選択可能条件を確認します。ボタンは正しくても、駅員が何も持っていない手を見ながら写真について話すなら、監督と編集担当者に素材の照合を依頼します。第七ノードの全バージョンが写真を見た前提になっているなら、まず脚本家に差し戻し、下流の取り決めを修正します。必要な反応素材がそもそも計画に含まれていなければ、プロデューサーが制作範囲の調整を取りまとめます。実装担当者に、その場で代わりの出口を推測させてはいけません。
未定義の入口状態が見つかった場合は、引き継ぎの不足として記録し、そのバージョンを受け入れ不可とします。実際の作品でどう復帰させ、どう案内するかは別途取り決める必要があり、不明な状態を勝手に「未保存」と扱ってはいけません。
改稿、代替案、この記入表の限界
すべてのルートで「写真を見せる」を選べるようにするなら、共通して写真を入手する展開を追加し、入口と情報の項目を同時に更新できます。素材を増やしたくないなら、選択肢の違いを維持することもできます。前者は物語の情報配分を変え、後者はルートごとの差を残します。どちらも明確に選ぶ必要があり、ボタンの文言でごまかすことはできません。
改稿時には変更記録を添えます。変更した項目、影響する上流・下流ノード、差し替えが必要な素材、再度の受け入れ確認を担当する人を記載します。たとえばスマートフォンのアップを削除しても、出口状態は変わらないかもしれません。しかし、不自然な日付が見えなくなる可能性があるため、その場合はプレイヤーの判断材料を再確認する必要があります。
ノード契約は責任と因果関係を確認可能にしますが、それだけで謎が魅力的か、演技に説得力があるかを証明することはできません。編集のカットポイントの受け入れ確認にも代わりません。まず一つの合流ノードを選び、三つの確認ケースをすべて埋めるところから始めるのが適切です。受け手がまだ「プレイヤーはどうやって知るのか」「ここではどの部分を撮るのか」「この後は何を覚えておくのか」と尋ねる必要があるなら、対応する項目に答えを追記してから、ほかのノードへ広げてください。


