実写インタラクティブゲームのオーディション:場面前の出来事を変え、分岐への対応を見る
セリフ、鍵を借りるという課題、相手役の返答は固定し、場面に入る前の出来事だけを一つ差し替える。再利用できる分岐条件変更オーディション課題シートを使い、俳優が異なる前提をその場の行動にどう反映するかを観察する。根拠のある調整と、単に感情を強める演技を見分けるための方法。

はじめに
実写インタラクティブゲームの俳優オーディションでは、同じセリフで同じ課題に取り組んでもらい、2回目は場面に入る前に起きた出来事を一つだけ差し替える方法がある。演出側が見るのは、その出来事を踏まえて頼み方をどう変えるか、そして元の目的を引き続き達成しようとしているかだ。声が大きくなったり、表情が強くなったりしただけでは、変更を受け止めたとは判断できない。
以下に、分岐の前提を差し替える際に繰り返し使える課題シートを示す。当番の職員が鍵を借りる設定、演出側の指示、行動の例は、すべて架空の教材である。実際のユーザー事例、検証結果、筆者自身が行ったオーディションの記録、DramaFork の製品機能ではない。また、俳優の能力を順位づけるためのものでもない。
まず課題を固定し、変化を比較できるようにする
この課題で見るのは一つだけだ。以前に協力してくれた同僚、あるいは頼みを断った同僚に対し、協力を得る方法を調整できるか。役の人物が達成すべきことは、どちらも鍵を借りることに変わりない。その場で新しい筋書きを作れるかを試す課題ではない。
固定するのは、セリフ、鍵を借りる用途、切迫度、双方の職位、立ち位置、相手役の返答、終了条件である。2回目に同僚を上司へ変え、通常の借用を緊急救助へ変えてしまうと、演技に大きな違いが出ても、どの情報による変化なのかを判断しにくい。
差し替える内容は、すでに起きた出来事として書く。「今回は強く怒っている」と直接指定しない。出来事なら解釈の余地があるが、感情のラベルを与えると、指定された表情を見せるだけの場になりやすい。どちらの版にも成功の可能性を残す。「以前に断られた」を「相手は絶対に承諾しない」に変えて、今ここで働きかける理由を奪わないこと。
条件を固定すると自由な演技の余地は多少減るが、演出側は調整の根拠を見分けやすくなる。即興への対応も見たければ、別の課題を設ければよい。この比較に詰め込む必要はない。
分岐条件を変えるオーディション課題シート:当番の職員が鍵を借りる
以下は記入済みのシートである。再利用する際は、まず人物と課題を置き換え、二つの版で同じ範囲の過去の出来事だけが変わっているか確認する。
固定する情報
- 人物:当番の職員・林舟と、同じ職位の同僚・陳禾。ほかに判明している対立はない。
- 課題:林舟は、陳禾が管理する資料室の鍵を借り、その勤務の引き継ぎノートを取りに行く。取ったらすぐに鍵を返す。引き継ぎに遅れはまだ出ていない。
- 場所:陳禾は出入口に立ち、鍵は陳禾の脇にある机に置かれている。林舟は室内の指定位置から始める。鍵を奪ったり、身体に触れたりしない。
- セリフ:林舟「鍵をちょっと貸して。引き継ぎノートを取ってくる。」陳禾「今すぐ必要なの?」林舟「うん、取ったらすぐ返す。ここで待ってて。」
- 相手役の動作:陳禾はセリフの後、林舟を見る。表情の指示や即興のセリフは加えない。林舟の最後のセリフで終了し、鍵を借りられたかどうかは演じない。
差し替える出来事
A版:昨日も林舟は、引き継ぎノートを取るためにこの鍵を借りようとした。陳禾は承諾し、林舟は約束どおりに返した。今日はまだ、二人ともその話をしていない。
B版:昨日も林舟は同じ頼みをしたが、陳禾は理由を説明せずに断った。林舟はその後、別の方法で引き継ぎを済ませた。今日はまだ、二人ともその話をしていない。
演出側の指示
1回目:「まずA版で演じてください。目的は、相手に鍵を貸してもよいと思ってもらうことです。昨日のことを観客に説明する必要はありません。」変更時:「今度はB版にします。それ以外の条件は変わりません。セリフは増やさず、どう切り出すか、相手の問い返しにどう応じるかを改めて決めてください。」
観察するポイント
話し始める前にどう相手の様子を確かめるか、問い返された後に働きかけ方を変えるか、返却の約束を誰に向けて伝えるか、最後のセリフでどう協力を促すかを記録する。各項目は具体的な瞬間を書き、その後に考えられる解釈を添える。「A版はリラックス、B版は緊張」を正解として先に埋めておかない。
演じ方を教え込まずに条件を変えるには
まず固定情報を読んでもらい、鍵の用途と関係性について分かっている事実を確認する。そのうえで、行動を理解する妨げになる曖昧さがないか尋ねる。演出側が補うのは課題文の不足だけであり、陳禾が断った心理的な理由まで決めない。どちらの版にも書かれていない事実を、その場で確定情報として扱ってはいけない。
A版を渡したら準備時間を設け、1回目を行う。その後、B版だけを別に渡し、「何が変わり、何が変わっていないか」を本人の言葉で説明してもらう。これは読み違いを除くためであり、説明の巧みさを演技の証拠にはしない。俳優ごとの準備時間はそろえ、特定の人だけが追加の説明を受けないようにする。
2回目が終わったら、先に観察記録を完成させてから、「場面前の出来事のうち、どの情報が今のやり方に影響しましたか」と尋ねる。答えを実際の行動と照らし合わせる。「また断られるのが心配だった」と話しても、変わったのが声量だけなら証拠はまだ足りない。一方、専門用語で十分に説明できなくても、問い返された後に約束の伝え方を変えていれば、その観察は残すべきだ。
もう一度ヒントを出す必要があれば、「昨日のことについての解釈はそのままで、相手がもっと承諾しやすくなるようにしてください」と伝えられる。間の取り方を実演したり、視線を指定したりしない。追加の演技は別に記録し、自力での調整と、ヒントを受けた後の調整を区別する。
感情の強さではなく、行動の根拠を記録する
「場面前に起きた事実—選んだ行動—観察できた瞬間—確認すべき解釈」の形で記録できる。以下は仮の記入例であり、実際の観察結果でも、俳優に再現を求める標準動作でもない。
A版の記録:「昨日は借りられ、約束どおり返した—協力関係を続けようとする—切り出すときは陳禾にまっすぐ向き、問い返しの後は返却の約束へ滑らかにつなぐ—問い返しを時間の確認と捉えた可能性がある。」B版の記録:「昨日は頼みを断られた—まず明確な反応を求め、その後で相手の懸念を和らげる—話す前に陳禾がこちらを見ているか確かめ、問い返しの後は『取ったらすぐ返す』を相手へ明確に伝える—約束を、信頼を改めて得る手段とした可能性がある。」
この二例の違いは、相手の反応の扱い方にある。どちらの感情が強いかではない。B版のほうが親しげでもよい。自分から関係を和らげようとする選択もありうる。課題文に根拠があり、事実を勝手に加えず、鍵を借りる目的に沿い続けているなら、さらに確認する価値がある。
反例は、B版で突然相手を怒鳴りつけ、その場を去ってしまい、鍵を借りる目的が消える演技だ。まず「昨日断られた」を「今日はそのことで文句を言いに来た」と読み違えていないか確認する。目的の理解に誤りがなければ、その行動がなお協力を得ようとするものかを見る。演技が激しいというだけで、変更への対応に成功したとは判断できない。
再確認が必要な結果と、このシートでは証明できないこと
2回の演技がほぼ同じでも、過去の出来事を理解していないと即断しない。普段どおりの態度を保つのが最も有効だと考えた可能性があるため、具体的な応答と本人による条件の説明を照合する。違いが大きい場合も、憎しみ、借金、職務怠慢など、課題にない関係性を勝手に足していないか確認する。
相手役が2回目に独断で冷笑を加えたり、演出側が「もう少し警戒して」と繰り返したりした場合は、条件が変わったと記録し、比較できる2回をやり直す。続けて演じることで慣れの影響も生じる。必要なら再確認時にA版とB版の順序を入れ替え、調整に依然として根拠があるか観察してよい。ただし、それであらゆる影響を排除できたとは言えない。
このシートは、配役を決める前に人物同士の関係を演じる短い場面に適しており、場面前の出来事の変更にどう応じたかについて、演出側が具体的な証拠を集める助けになる。ただし、作品全体への適性を単独で証明するものではなく、本番撮影の素材を複数ルートで共用できるかも判断しない。最後に、固定情報、二つの版の出来事、実際に出した指示、観察した場面を保存する。追加で見たい点には対応する別の課題を設け、鍵を借りる一場面から俳優の能力全体を結論づけないようにする。






