ストーリーを書く前に:誰がどんな状況で作品を遊ぶのかを定義しよう
インタラクティブ映像ゲームの企画で最初に作るべき資料は、人物設定ではなく「ターゲットプレイヤーの状況カード」だ。誰が、どの端末で、いつ、どんな期待を持って作品を始め、どんな理由で中断するのか。状況が明確になって初めて、チームは一回の映像の長さ、選択の制限時間、字幕サイズ、セーブ地点、コンテンツとして約束することを決められる。

はじめに
インタラクティブ映像ゲームの企画で最初に作るべき資料は、人物設定ではなく「ターゲットプレイヤーの状況カード」だ。誰が、どの端末で、いつ、どんな期待を持って作品を始め、どんな理由で中断するのか。状況が明確になって初めて、チームは一回の映像の長さ、選択の制限時間、字幕サイズ、セーブ地点、コンテンツとして約束することを決められる。
「若いプレイヤー」「女性ユーザー」「ミステリーが好きな人」では、どれも具体性が足りない。有効な説明は、たとえばこうだ。夜十時以降にスマートフォンを使い、ショートドラマを続けて見る習慣があり、人間関係に関する選択はしたいが、複雑な操作は覚えたくない十八歳から三十五歳のユーザー。この説明は宣伝文句だけでなく、プロダクトそのものを直接変えられる。
「人、きっかけ、制約、結果」でプレイヤーを説明する
実際に活用できるプレイヤーの状況カードには、少なくとも四つの要素がある。
一つ目は人だ。人口統計上の属性ではなく、関連する経験を記録する。たとえば「実写のショートドラマは見たことがあるが、ビジュアルノベルは遊んだことがない」は、「二十五歳の女性」よりも、チュートリアルでどこまで説明すべきかをよく示している。
二つ目はきっかけだ。なぜ今、この作品を開くのか。俳優の登場する映像に引かれた、友人に勧められた、特定の題材を検索した、Steam Nextフェスで体験版をダウンロードした、といった理由が考えられる。きっかけによって、プレイヤーが作品についてすでに知っていることは変わる。
三つ目は制約だ。どの端末を使うのか、まとまった時間がどれくらいあるのか、音を消すのか、安定してインターネットに接続できるのか、一時停止が必要なのか。インタラクティブ映像ゲームでは特に、「動画を見ている人が、いつでも操作できるとは限らない」という点を見落としやすい。
四つ目は結果だ。作品を離れるときに何を得たいのか。謎を解くこと、関係を確かめること、自分の選択の結果を見ること、共有に向いたエンディングをクリアすることかもしれない。結果はプロダクトが提供できるものでなければならず、単に「没入感を得る」と書くだけではいけない。
同じ物語でも状況が変われば別のプロダクトになる
《零点回拨》の中心的な設定は、未来からの電話だ。ターゲットプレイヤーがパソコンの前に座り、二十分で一つの調査を終えたいと考えているなら、通話履歴、入退室ログ、監視カメラ映像を用意し、証拠を比較できるようにすることができる。
ターゲットプレイヤーがスマートフォンで三分間、一話を体験するのであれば、設計を変える必要がある。冒頭の十数秒以内に異常な着信があり、各話では一つの問いだけを進め、重要な文字は小さな画面でも読めるようにする。選択の際に五つの手がかりを同時に覚えていることを求めるべきではない。
作品がライブ配信の視聴者を対象にするなら、配信者が選択肢を説明できるか、投票時間がテンポを遅くしないか、失敗エンディングが配信の見せ場になるかも考える必要がある。物語の設定は変わらないが、基本となるプレイの循環、インターフェース、コンテンツの単位はすべて変わる。
「すべての人」をより大きな市場と考えない
すべての人を対象にするということは、多くの場合、どの状況にも十分に対応できていないということだ。ミステリーのコアプレイヤーは公平な手がかりと検証可能な推理を求める。ショートドラマの視聴者は素早く対立に入ることを求める。ビジュアルノベルのプレイヤーは大量の文章を受け入れられるかもしれないが、キャラクターごとのルートを重視する。ライブ配信の視聴者には、議論できる選択が必要だ。
最初のバージョンでは主な状況を一つ選び、併せて対応する状況は多くても一つにする。たとえば、主な状況を「PCで一人、二十分のミステリー体験を完了する」、併せて対応する状況を「配信者によるライブ配信」とする。スマートフォンでの細切れの視聴、深い推理、家族のリビングでの複数人による投票、長編のキャラクター育成を同時に約束してはいけない。
プレイヤーの状況は具体的にどの設計に影響するのか
| 状況に関する情報 | 直接影響するもの |
|---|---|
| 一回に使える時間 | チャプターの長さ、セーブ地点、振り返り機能 |
| 端末と視聴距離 | 字幕、ボタン、画面のセーフエリア |
| 音を消しているか | 字幕、重要な効果音を代替する視覚表現 |
| このジャンルに初めて触れるか | チュートリアル、選択肢のヒント、用語の数 |
| 流入経路 | 冒頭の背景説明、ストアページでの約束 |
| 中断する理由 | オートセーブ、再開、既読スキップ |
| 期待する結果 | エンディング、フィードバック、CTA |
アクセシビリティも利用状況の一部であり、公開直前の飾りではない。Xboxの字幕とクローズドキャプションのガイドラインは、FMV、カットシーン、会話、重要な音による合図を明確に対象に含めている。時間制限のガイドラインも、読み取りと操作が必要なインターフェースには十分な時間や調整手段を用意するよう開発者に促している。
このカードがチームの想像にすぎないものではないと確かめるには
まず、ターゲットの状況に近い人を五人見つける。「このアイデアが好きですか」と聞く必要はなく、現在の行動を観察する。最近何を遊んだり見たりしたか、一回にどのくらい続けるか、いつ終了するか、字幕を使うか、選択に直面したときに一時停止して話し合うかを見る。
次に、一文の設定と簡素な選択の試作を見せ、「ここで自分は何をするのか」を自分の言葉で説明してもらう。五人がまったく異なる答えを出したなら、問題は通常、ユーザーではなく、プレイヤーへの約束が不明確なことにある。
少数のインタビューを「ユーザーは一般的にこう考えている」と書いてはいけない。インタビューの役割は状況と仮説を発見することであり、市場規模を証明することではない。市場を判断する必要があるときは、ストアページ、レビュー、検索、類似作品の実績を追加して調べる。
そのまま記入できる状況カード
- 主なプレイヤー:
- 関連する経験:
- 流入経路:
- 使用端末:
- 一回に使える時間:
- よくある中断:
- 音を消すか、字幕が必要か:
- 達成したい課題:
- 最も心配している使いづらさ:
- 完了後に得たい結果:
- 最初のバージョンでは対応しないと明示する状況:
このカードを完成させてから、次の記事で必要となる「プレイヤーへの約束」を書こう。そうしなければ、魅力的な物語のあらすじがあっても、どんなゲームを作るべきかをチームに伝えることはできない。


