インタラクティブストーリー用語集の書き方:変えられる語と変えてはいけない意味は?
用語集が解決すべきなのは「この語をどう翻訳するか」ではなく、「この語がどの位置に現れ、どこまで置き換えが許され、置き換えた後に物語論理が壊れないか」である。やり方は四段階に分けられる。まず各語に意味スロットを定め、次にその定義・文脈・反例を書き、その後で可変部分と凍結部分を示し、最後に未確定の訳名を別に列挙して、校閲者に一件ずつ裁定を委ねる。

ガイド
用語集が解決すべきなのは「この語をどう翻訳するか」ではなく、「この語がどの位置に現れ、どこまで置き換えが許され、置き換えた後に物語論理が壊れないか」である。やり方は四段階に分けられる。まず各語に意味スロットを定め、次にその定義・文脈・反例を書き、その後で可変部分と凍結部分を示し、最後に未確定の訳名を別に列挙して、校閲者に一件ずつ裁定を委ねる。
以下では架空の教育用例で全工程をたどる。浮城通行証と招待状は架空の設定であり、その中の訳名と外国語表記は構造を示すためだけに用いており、どの言語の母語話者の習慣にも合致することを保証しない。
まず四種類の語を区別し、それから動かせるかどうかを決める
同じ物語の中でも、名称、仕組み、身分呼称、世界事実は担う機能が異なり、変動可能な幅も異なる。
| カテゴリ | 役割 | 可変部分 | 凍結部分 |
|---|---|---|---|
| 名称 | 具体的な事物を指す | 音訳か意訳かの選択、語順 | 指示対象、可算かどうか、他の名称との区別 |
| 仕組み | ルールがどう働くかを説明する | 説明的な言い回し | 発動条件、結果、代償、適用範囲 |
| 身分呼称 | 人物関係と権限を示す | 敬称、口語度 | 誰が誰に対して使うか、従属か平等かを示すか |
| 世界事実 | 背景を構成する既定情報 | 叙述視点での表現方法 | 真偽、時間、数量、因果関係 |
名称は表記を変えられるが、仕組みは因果を変えられず、身分呼称は関係の方向を変えられず、世界事実は真偽を変えられない。校閲時にもっとも問題になりやすいのは、仕組み語を名称語のように意訳してしまい、その結果発動条件がひそかに変えられることである。
構成ケース:浮城通行証と招待状
物語に浮城があり、内環に入るには二種類の証憑が必要だと仮定する。通行証と招待状である。通行証は城門で発行され、誰でも列に並べば受け取れ、有効期間は一日である。招待状は城内の住民が城外の人に書き、一通で一人しか連れて行けず、到着前に届けなければならない。どちらも人が関門を通ることを可能にするが、通行証では外環しか通れず、招待状でのみ内環に入れる。
用語集はこう書ける:
通行証(pass token)
- 定義:城門で発行される一時的な証憑で、所持者が外環に入ることを許可されていることを証明する。
- 文脈:列に並ぶ、検査、期限切れで無効になる場面に現れる。
- 凍結:発行場所、一日の有効期間、外環しか通れないこと。
- 可変:「通行牌」「臨時証」と訳してもよいが、「内環」の文字を出してはならない。
- 反例:「内環通行証」と訳すと招待状の権限と重なり、後文で衝突が生じる。
招待状(invitation letter)
- 定義:城内の住民が城外の特定の受取人に書く証憑で、一通につき一人に限られ、到着前まで有効である。
- 文脈:手紙を受け取る、譲渡する、名前を検査する場面に現れる。
- 凍結:書き手は城内の住民でなければならない、一人に限る、到着前に届ける。
- 可変:呼称は口語化してよいが、複製可能または購入可能な物品になってはならない。
- 反例:「入場券」と訳すと城門で購入できることを暗示し、「住民が書かなければならない」という設定を壊す。
関門(gate check)
- 定義:証憑を検査する関所であり、地名ではない。
- 文脈:通行証と招待状のどちらもここで検査される。
- 凍結:検査行為、通行許可の結果。
- 可変:「関所」「検査口」と訳してよい。
- 反例:「城門」と訳すと通行証を発行する場所と混同される。
登場人物は会話の中で偽の口実を作るかもしれない。たとえば誰かが「招待状は三人を連れて行ける」と言う。この文は登場人物の嘘であり、新しい世界事実ではない。用語集ではこれを「登場人物の台詞中の誤った説」と標記し、真のルールは依然として一通につき一人であると注記すべきである。校閲者がこの種の文を見たら、まずそれが叙述か登場人物の発言かを判断し、それから修正を発動すべきか決める。
定義・文脈・反例・審査待ち訳名の四欄はどう埋めるか
各欄には明確な合格基準がある。
定義には「それが何であり、誰によって生み出され、誰に対して有効か」を書き、修辞は書かない。文脈には「それが通常どの種類の場面に現れるか」を書き、翻訳者が語調を判断できるようにする。反例には「どの訳し方がどのような結果を生むか」を書く。これは用語集の中で最も省略されやすいが、誤訳を最も防げる欄である。審査待ち訳名には「現在の候補表記」を書き、未定の理由を注記する。たとえば「候補Aは字面に近く、候補Bは口語に合うため、登場人物の身分と合わせて決める必要がある」などである。
審査待ち訳名は確定済み訳名と混ぜてはいけない。校閲者はどれがそのまま使え、どれが立ち止まって判断すべきかを一目で見分ける必要がある。審査待ち項目には簡単な印を付けてもよい。たとえば名称の後に「審査待ち」と書き、本文中で誤用するのを避ける。
完成チェック
使用可能な用語集は、納品前に一件ずつ照合できる:
- 各名称が「何を指し、何を指せないか」に答えられる。
- 各仕組みが発動条件、結果、代償を明確に書いている。
- 各身分呼称が使用者と対象を明示している。
- 各世界事実が叙述事実と登場人物の発言を区別している。
- 反例欄が少なくとも一件あり、結果を説明している。
- 審査待ち訳名が別に列挙され、確定済み項目と混在していない。
- 表の中で同一事物の権限記述が異なる項目間で一致している。
ある用語に反例を書けない場合、通常はその境界がまだ考え切れていないことを示す。まず物語に戻ってそれが誤用される場面を一箇所探し、それから補えばよい。
次の段階では、もっとも誤訳されやすい仕組み語を三つ選び、それぞれに反例を一つ書いて用語集に入れ、校閲者に試し判定を依頼するとよい。


