作者用の解答・プレイヤー向け本文・制作メモを、なぜ三層に分けるのか?
解答の説明、プレイヤーへのヒント、制作指示は、それぞれ届ける相手が異なります。三層の引き継ぎカードで、誰が閲覧でき、何を受け取り、どこまで公開できるかを明確にし、実際に渡すコピーを確認することで、解答が本文と一緒に流出するリスクを減らします。

文書を整理する前に、誰に何を渡すかを明確にする
謎の解答とプレイヤーへのヒントが混在している場合は、用途に応じて「作者用の解答」「プレイヤー向け本文」「制作メモ」の三層に分け、それぞれの受け取り手と引き渡す範囲を指定します。目的は、公開担当者が公開可能な内容を正確に受け取り、直前になって削除すべき文を推測せずに済むようにすることです。
作者用の解答は謎が成立する理由を説明し、プレイヤー向け本文はその時点で見える手がかりや反応を示し、制作メモはそれらの文章を作品にどう組み込むかを説明します。同じノード番号を参照していても、三層をまとめて渡すことを前提にしてはいけません。特に「内部用」という表示は注意喚起にすぎず、文書全体を持つ人による複製、転送、書き出しを防ぐものではありません。
以下では『無人駅のロッカー』を例に説明します。これは架空の教材用事例であり、実際のユーザー事例でも、検証済みの成果でもなく、製品の機能を示すものでもありません。ここで扱う原稿の分割、引き継ぎ、確認は、すべて人の手で行う作業方法です。
一つの謎で、三層それぞれの役割を確認する
この設定では、プレイヤーは三桁の暗証番号で開くロッカーを開ける必要があります。現場には六月十二日、十三日、十四日の日付が記された三枚の切符があり、列車番号の末尾はそれぞれ四、七、二です。扉には「日付をたどれ。早い順に、列車番号の末尾だけを取れ」と刻まれています。あらかじめ設定された正解は四七二です。
混在した原稿は、たとえばこうなります。「扉には『日付をたどれ。早い順に、列車番号の末尾だけを取れ』と刻まれている。四七二を正しく入力すると扉が開き、誤入力では閉じたまま。ここでは切符の日付を切り取らないこと。」この一続きの文章には、見える手がかり、正解、入力に応じた動作の規則、画面制作上の要件が含まれています。丸ごとコピーしたり、記憶を頼りに括弧内だけを削除したりすると、出してはいけない内容が残りがちです。
分割後の作者用の解答には、切符を日付順に並べ、各列車番号の末尾を取ると四七二になる、という推論の過程を記録します。また、並び順が一意に決まるよう、三枚の日付がすべて異なることも明記します。プレイヤー向け本文には、扉の刻印、三枚の切符の券面全体、「ロッカーの扉が開いた」「ロッカーの扉はまだ開かない」といった反応だけを残します。制作メモには、入力欄は三桁にする、正解なら扉が開く場面の文章へ遷移し、不正解なら現在の場面にとどまる、券面の日付と列車番号を読み取れるようにする、と記します。
ここで分類を誤りやすいのが「正解なら扉が開く場面の文章へ遷移する」です。答え自体は含まれていませんが、制作指示なので地の文として表示してはいけません。逆に、券面の数字は謎解きに関係していても、プレイヤーに必要な証拠です。ネタバレを恐れてすべて取り除くことはできません。
この三層の引き継ぎカードをそのまま使う
謎ごとに引き継ぎカードを作り、共通の番号で三層を関連付けます。カード自体は内部用の索引であり、プレイヤー向け本文と一緒には公開しません。ファイルの場所と渡す相手の範囲を記録するもので、解答をもう一度書き写す必要はありません。
| 層 | 保存する内容 | 受け取り手の範囲 | 引き渡してよい内容 |
|---|---|---|---|
| 作者用の解答 | 真相、推論、判定根拠、曖昧な点 | 主筆と論理を確認する必要のある共同制作者 | 対象ノードの解答記録 |
| プレイヤー向け本文 | 見える場面、手がかり、選択肢、反応 | 文章の制作担当者と公開担当者 | 確認済みの本文と必要な素材 |
| 制作メモ | 表示条件、遷移、素材の要件 | 該当作業の実装担当者または検収担当者 | その作業に必要な指示 |
カードには、ノード番号、三層それぞれの版、各層の責任者、受け取り手、引き渡し一覧、公開先、未解決事項も記入します。空欄を「自由に処理してよい」と解釈してはいけません。たとえば公開先が未定なら、どの文章がプレイヤーの目に触れるかもまだ判断できません。
この例では、ノードは「ロッカー〇一」、三層とも第二版、公開先はロッカーの場面、本文の引き渡し一覧は扉の刻印、三枚の券面、入力説明、二つの反応文、未解決事項はなし、と記入できます。作者が解答、編集者が本文、実装担当者が制作メモを担当し、引き継ぎ前にそれぞれ該当する版を確認します。
受け取れる範囲は、一人一層と機械的に分ける必要はありません。入力判定の担当者が四七二を必要とするなら、そのノードの判定値を追加の引き渡し項目にします。他の謎の真相まで、すべて必要とは限りません。券面を描く人には日付と列車番号の全体が必要ですが、結末の説明は不要かもしれません。範囲は役職名で一律に区切らず、作業内容に合わせます。
混在した原稿から引き渡し用コピーまでの流れをたどる
まず一文ずつ用途を付記し、用途の混じった文を独立した項目に分けます。段落を丸ごと移すだけでは不十分です。「四七二を正しく入力したら、『ロッカーの扉が開いた』と表示する」は、判定条件と表示文に分けなければ、解答が本文に結び付いたままになります。
次に項目へ番号を振ります。この例では、扉の刻印を本文一、三枚の券面を本文二〜四、成功時と失敗時の反応を本文五、六とします。制作メモはこれらの番号を参照し、どの項目をいつ表示するかを記します。参照は重複した書き写しを減らすためのもので、何らかのツールが自動で同期を保つという意味ではありません。
その後、受け取り手の作業ごとに引き渡し用のコピーを作ります。公開担当者には本文一〜六と入力説明、画面制作担当者には券面の内容と読みやすさの要件、判定の実装担当者には該当ノードの解答、反応文の番号、遷移の要件を渡します。内部用の全体原稿を残すことはできますが、「必要な部分を自分で探して」という渡し方で引き継ぎを済ませてはいけません。
最後に改稿への対応です。二枚目の切符の末尾を七から八に変えるなら、解答も四八二へ変える必要があります。責任者は券面、作者用の解答、判定に関するメモをまとめて照合し、版を再確認します。画像だけを差し替えて判定を更新しなければ、正しい手がかりに従ったプレイヤーへ誤った反応を返してしまいます。三層への分割は混在を減らす一方、関連箇所の整合性を保つ作業を増やします。その負担は誰かが引き受けなければなりません。
誤公開の確認は、最終的に渡すものに対して行う
公開前には、整理された全体原稿だけを見るのではなく、実際に渡す予定のコピーを開いて一項目ずつ確認します。
- 引き渡し一覧と照合し、解答ページ、内部索引、余分な添付ファイルがないことを確認する。
- タイトル、ファイル名、コメント、変更履歴、リンク先を調べ、本文以外から解答が漏れる可能性を取り除く。
- 「正解」「判定」「要修正」などの内部向け表現を検索し、各文の用途を判断する。これらの語が見つからなくても、漏れがない証明にはならない。
- プレイヤーが触れる順序で読み、三枚の切符と扉の刻印がすべて残り、反応が取り決めた条件でのみ表示されることを確認する。
この例では、各切符に四、七、二が記されていることは必要な手がかりです。一方、扉の脇に「四七二を入力」とあれば、プレイヤーの代わりに推論を済ませてしまいます。したがって確認すべきなのは、情報の組み合わせ、位置、出現条件です。解答に関係する数字をすべて禁止語にすることはできません。
小規模な個人制作では、全体原稿の中に三つの明確な区画を設けても構いません。ただし引き渡す際には、必要な内容だけを含むコピーを作るべきです。複数人で継続的に改稿するなら、独立した三つの文書と一枚の引き継ぎカードを使えます。段落の折りたたみ、列の非表示、文字色は読みやすく整理するためのものであり、受け取り手のアクセス制限と考えてはいけません。
クリア後の解説が別にある作品でも、作者用の解答をそのまま公開することはできません。没案や制作上の説明が混じっている可能性があるため、プレイヤーが謎解きを振り返るための本文を別に書く必要があります。三層が扱うのは、共同制作における情報の帰属と引き渡し範囲です。ヒントをどこまで明かすべきか、謎が公平かどうかは、それぞれ別に判断する必要があります。


