インタラクティブ映画の小道具バージョン表:同じ手紙をルート間で勝手に変えない
未開封、開封済み、再封印に別々の番号を付け、各ショットの開始条件、変化の動作、終了状態を一冊に記録します。記録担当は使う手紙を判断でき、編集者は共用できる素材を把握できます。

はじめに
同じ手紙のバージョン表には、「今どう見えるか」と「何を経てきたか」の両方を記録します。未開封、開封済み、再封印は独立した三状態です。各ショットでは開始時に許可する状態、状態を変えるかどうか、終了時に何が残るかを宣言します。「封筒の小道具一個」だけでは、分岐の合流で開封済みの手紙がいつの間にか無傷へ戻ることを防げません。
1. この手紙が物語にどう影響するかを決める
以下は『雨の夜の受け渡し』を使った記入例です。架空の教材であり、実際の利用事例、検証済みの結果、製品機能ではありません。台帳と判断規則も説明用の設計です。
林嵐は門番に手紙を届けるよう託されます。プレイヤーはそのまま届けるか、開封して中を確認するかを選べます。読んだ後も、開けたまま渡すか再封印するか選べます。門番は受け渡し時に封を調べるため、封筒の見た目は物語の証拠であり、普通の背景テクスチャのように自由に変えてはいけません。
まず物の識別を固定します。生成り色の封筒で、表の右上に青い丸、裏に三角のフラップがあり、中には折った便箋一枚。丸で同じ物だと識別し、フラップで状態を見分けます。本例では開封で右側に破れが残り、再封印には細い紙テープを使い、破れはそのまま残ると定めます。
同時に、手紙は開けられたか、林嵐は読んだか、門番は知っているか、の三問を分けます。一つの「開封済み」項目で扱ってはいけません。開けたことは最後まで読んだことを意味せず、門番がまだ封を見ていないことも、物に痕跡がないことを意味しません。
2. 三つのバリエーションを参照できる基本表にする
先にバリエーションの基本表を作り、ショットから番号を参照します。番号は物語上の状態、改訂番号は制作仕様を表します。テープ幅の変更で仕様を改訂しても、再封印を未開封へ改名してはいけません。
| バリエーション番号 | 状態と識別点 | 中身 | どこから生じるか | 混同禁止 |
|---|---|---|---|---|
| 手紙A | 未開封。フラップは接着済み、破れ・テープなし | 便箋一枚が中にある | 物語開始時 | 開封後に使わない |
| 手紙B | 開封済み。フラップが開き、右に破れ | 取り出すか戻すかをショットごとに記録 | 手紙Aを開ける | 再封印の代用にしない |
| 手紙C | 再封印。細いテープがフラップをまたぎ、破れは残る | 便箋一枚を戻してある | 手紙Bに便箋を戻してテープを貼る | 未開封のままと記さない |
各状態には表、裏、封の近接写真を付け、仕様の改訂番号と写真番号を書きます。参考画像で破れの左右やテープの範囲を示せることが必要です。表の写真だけでは受け渡しのクローズアップを規定できません。
同じ状態の実物を複数用意しても構いません。個体番号は撮影での消耗を追跡するもので、物語上の同一性は変えません。「手紙Bの個体2」も開封済みです。破れが明らかに異なる個体は違いを記し、用途を限定します。同じ番号だからといって、隣接するクローズアップに使ってはいけません。
再利用できる基本表の項目は、物の番号、状態番号、仕様改訂、識別点、中身、参考写真、実物個体、禁止条件です。情報のない欄には「未定」と書き、空欄で確認済みを暗示しないようにします。
3. ショット台帳に開始条件と終了状態を書く
状態表は「どんな手紙があるか」、ショット台帳は「今どれを使うか」に答えます。以下では三つの受け渡しルートを一表に記入し、絵コンテ、記録、編集の担当者が共同で確認できるようにします。
| ショット | 開始条件 | 開始時の状態 | 動作と必ず見せる箇所 | 終了状態 |
|---|---|---|---|---|
| 開始1 | まだ選択していない | 手紙A | 林嵐が手紙を持ち上げる。表の丸が見える | 手紙A、林嵐が所持 |
| 直送2 | そのまま届ける選択 | 手紙A | 裏返して渡す。無傷の封が見える | 手紙A、門番が所持 |
| 開封2 | 中を見る選択 | 手紙A | フラップを開け、便箋を抜いて読み終える。破れができる | 手紙B、便箋は手元、林嵐は確認済み |
| 開封渡し3 | 確認済みで、開けたまま渡す選択 | 手紙B | 便箋を戻して渡す。開口が見える | 手紙B、門番が所持 |
| 再封3 | 確認済みで、再封印を選択 | 手紙B | 便箋を戻してテープを貼る。破れは残る | 手紙C、林嵐が所持 |
| 再封4 | 再封3完了 | 手紙C | 裏返して渡す。テープと破れが見える | 手紙C、門番が所持 |
実務では素材ファイル、実際のテイク、画面への出入り方向、確認記録を追加します。ルート名は検索の補助にすぎず、条件の代わりになりません。「確認ルート」にも手紙BとCがあるので、ルートだけで小道具を選ぶと間違える可能性があります。
再封4なら、撮影前にまず再封3の終了記録を照合し、便箋が中に戻り、テープが裏にあり、破れが残っているか確認します。撮影後は実際の個体番号と採用テイクを台帳に記入します。急に左手で渡すことに変えた場合も追記し、次のショットをつなぎやすくします。
4. 合流で共用するものと残すものを決める
三ルートとも門番の前に着くからといって、同じ封筒のクローズアップを共用できるわけではありません。手紙A、B、Cの差はまだ有効です。合流ノードには三つの入口状態を残します。
一案は門番が顔を上げる反応ショットを共用し、受け取るクローズアップを三版撮る方法です。共用ショットは封、中身、状態に矛盾する台詞を本当に露出させないことが必要です。画面端にテープが見えるだけでも、三ルート共用とは記せなくなります。
別案は物語の中で外見差をなくす方法です。例えば門番が全ての来信をその場で開け、便箋を机に広げます。各入口で妥当な動作を撮って初めて、その後の広げた便箋のショットを共用できる可能性が生まれます。外見が合流しても、林嵐が先に読んだかは別に保持し、後の台詞でその知識をリセットしてはいけません。
封が謎に関わらなければ、受け渡しの構図を変え、常に表だけ見せる方法もあります。ただし下がるのはそのショットの外見要件だけで、基本表の手紙CをAに戻すことはできません。後で裏を映すなら、正しい状態を使う必要があります。
5. 三つの確認でやり直す範囲を特定する
一つ目は不正な変化です。各ルートで終了状態と次ショットの開始状態をつなぎ、「手紙CからA」があれば変化の根拠を尋ねます。封筒を交換する物語上の動作がなければ、小道具の指定や素材選択を修正します。台帳を書き換えて映像の誤りを隠してはいけません。
二つ目は証拠が見えるかです。再封3にテープ貼りを記録していても、手が全動作を隠せば、観客は次ショットでテープが増えた理由を理解できないかもしれません。動作を示す細部の追加撮影が可能です。必要かどうかは、その変化を観客がその場で知る必要があるかによります。
三つ目は変更の影響です。手紙Cのテープを横貼りから斜め貼りへ変えるなら、その仕様を参照する全ショットを先に列挙し、維持、差し替え、追加撮影を一つずつ記します。同じ手紙を使うからといって未開封ルート全体をやり直す必要はありませんが、手紙Cの隣接クローズアップは比較し直します。
この台帳は観客が必ず理解したと証明するものではなく、生成や撮影の素材が仕様を満たす保証でもありません。どの状態が必要か、実際に何が映ったか、差がどのショットに及ぶかという追跡可能な根拠を提供します。引き継ぎ前に三ルートを各一回照合し、全ての物の変化に由来があり、全ての共用素材に明確な条件があるようにします。


